2013/02/25

3/3(日) ジャズピアニスト 山下洋輔氏によるパフォーマンス   ※申込不要、無料

©Kiyomitsu Shirouzu


「TWO TIMES—ふたつの時間」の展示最終日を記念して、フリー・フォームのエネルギッシュな演奏でジャズ界に大きな衝撃を与えるジャズ・ピアニストの山下洋輔氏をお迎えし、30 分程度のパフォーマンスを行います。ぜひお越し下さい。
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「ジャズピアニスト 山下洋輔氏によるパフォーマンス」

出 演 :山下 洋輔氏(ジャズ・ピアニスト)
日 時 :2013年3月3日(日)14:00ー14:30(予定)
会 場 :神奈川県立近代美術館 葉山 中庭
 ※申込不要、無料、雨天決行
 ※ご来場のお客様によるパフォーマンスの撮影・録画は禁止とさせていただきます。
 ※お立ち見での鑑賞となりますので何卒ご了承ください。
 ※本プロジェクトDVD・報告書作成の為、 当日の模様を撮影・録音いたします。

◆出演者の紹介 山下洋輔氏  (Yosuke Yamashita)  piano


 1969年、山下洋輔トリオを結成、フリー・フォームのエネルギッシュな演奏でジャズ界に大きな衝撃を与える。国内外の一流ジャズ・アーティストとはもとより、和太鼓やシンフォニー・オーケストラとの共演など活動の幅を広げる。88年、山下洋輔ニューヨーク・トリオを結成。国内のみならず世界各国で演奏活動を展開する。
 2006年オーネット・コールマンと、07年にはセシル・テイラーと共演。08年「ピアノ協奏曲第3番<エクスプローラー>」を発表。
 09年、一柳慧作曲「ピアノ協奏曲第4番 "JAZZ"」を世界初演。歴代メンバー総出演の「山下洋輔トリオ結成40周年記念コンサート」を開く。11年、ニューヨーク・トリオのアルバム『ディライトフル・コントラスト』をリリース。12年2月、古稀記念のコンサートをベトナム・ハノイで開催。11月、12年ぶりのソロピアノ・アルバム『スパークリング・メモリーズ』をリリース。
 99年芸術選奨文部大臣賞、03年紫綬褒章、12年秋の叙勲で旭日小綬章受章。国立音楽大学招聘教授。演奏活動のかたわら、多数の著書を持つエッセイストとしても知られる。最新作は『即興ラプソディ−私の履歴書−』。(2013.01)




2013/02/20

2/24(日) 田中泯氏によるパフォーマンス「田中泯『場踊り』ーカラダトアタシー」※申込不要、無料

[2013.2.15更新]

インドネシア場踊り©Daizaburou Harada

みずからの身体の置かれた場に感応しながら、従来のダンスの枠にとらわれない自在な身体表現の可能性を追求する田中泯氏が、ゴームリーの「ふたつの時間」とその独自な踊りによってデュエットします。わたしたちは「場」と「彫刻」を変容させるスリリングな一度限りの出来事を目撃することになるでしょう。

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【パフォーマンス②】「田中泯『場踊り』ーカラダトアタシー」

出 演:田中 泯氏(ダンサー)
日 時:2013年2月24日(日) 14:00〜(約1時間の予定)
会 場:神奈川県立近代美術館 葉山 敷地内

※申込不要、無料、雨天決行
※パフォーマンスをカメラを通じてではなく肉眼でご覧いただきたいとの出演者の意向により、 ご来場のお客様によるパフォーマンスの撮影・録画は禁止とさせていただきます。ご了承ください。
※美術館の敷地内(屋外)を移動しながらの約1時間のパフォーマンスとなります。お立ち見での鑑賞となりますので何卒ご了承ください。
※本プロジェクトDVD・報告書作成の為、 当日の模様を撮影・録音いたします。
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[New!!] 「サイン会のお知らせ」
パフォーマンス終了後の15:30〜16:00、美術館のミュージアムショップと工作舎(出版社)主催による田中泯氏のサイン会が行われることになりました。
美術館ミュージアムショップで田中泯氏の著書をご購入いただいた方には、ご本人がサインに応じてくださいます。ぜひお越し下さい。


◆出演者の紹介 〜 田中泯氏(ダンサー)
©Madada Inc.
1945年東京生まれ。クラシック・バレエとモダンダンスを学び、66年からソロダンス活動開始。「ハイパーダンス」と称して新たな踊りのスタイルを発展。78年パリ秋芸術際「日本の間」展で海外デビュー。国内外で独舞、グループ作品の公演を数多く行う。85年山梨県の農村に移住、農業生活を開始。97年伝統的舞踊の資料収集「舞踊資源研究所」設立。00年、拠点を同県内「桃花村」移す。現在、意欲的に「場踊り」を展開中。また、ダンサーとしての経験を生かし、映画、TVドラマ・ドキュメンタリーなどで活躍もしている。土方巽に私淑。◎著書『僕はずっと裸だった』(2011年、工作舎刊)
 →田中 泯 オフィシャルサイト http://www.min-tanaka.com/





2013/02/18

「美術館バックヤードツアー」が行われました




「TWO TIMESーふたつの時間」の展示終了まで残り半月となった2/16(土)、神奈川県立近代美術館 葉山にて「美術館バックヤードツアー」が行われました。
このプログラムは、「TWO TIMESーふたつの時間」の担当学芸員が、普段は立ち入る事のできない美術館のバックヤードをご案内しながら、展覧会ができるまでのお話や、学芸員の仕事、美術館の役割についてざっくばらんにお話をさせていただき、参加者の皆さんに、より一層美術館に親しんでいただきたいとの思いで企画されました。

それでは当日の様子を写真とともに振り返って参りましょう。


1.講堂にて「美術館を知る」DVDの上映

前日の駆け込みでのお申し込みで定員一杯となった今回のツアー。
参加者の方々にはまず美術館の講堂にお集まりいただき、神奈川県立近代美術館の3館(鎌倉館・鎌倉別館・葉山館)と、美術館のバックヤードをご紹介したDVDをご覧いただきました。







2.作品搬入を行う搬入口(トラックヤード)へ
DVDで美術館の基礎知識をつけていただいた後は、中庭から関係者入口を通り、作品の搬入が行われる搬入口へご案内しました。
美術館の搬入口は、作品が運ばれてきたトラックが到着した際、海の潮や外気の埃等が美術館の中に入らないように両側のシャッターを閉めて換気をする設備がついています。数十分間の換気の工程を経てはじめてトラックの荷台を開け、美術品は館内に入ります。


現在トラックヤードには、2体のゴームリー彫刻が収められていたクレート(梱包用の箱)が保管されています。この2つの大きな木箱に入れられて、ゴームリーの彫刻たちはイギリスからやってきました。
担当学芸員がクレートの仕組みや作品の海外輸送について参加者の皆さんに解説します。






3.学芸室と図書室の書庫へ

搬入口をご覧いただいた後は、関係者入口から館内へ入り、学芸員達が日々仕事をしている学芸室へご案内しました。
沢山の書籍やカタログ、参考資料で埋め尽くされた学芸室ですが、この場所で、今この瞬間も、展覧会が生み出されています。普段は見ることのできない裏方の様子に、参加者の皆さんも興味深くご覧になっていました。

学芸室の後は隣にある図書室へ。
司書の方の案内で、普段は立ち入る事のできない書庫の中にも入りました。
床下の金網越しに見える地下までぎっしりと詰まった蔵書の数々に、参加者の方々も驚かれたご様子。
図書室は美術館開館時間は無料で入れますのでぜひご利用くださいね。






4.管理課、そしてエントランスへ

学芸室や図書室のある地下から、美術館の非常階段を使って、展示室の上の階まで上がっていきます。


展示室の上の階には館長室と、美術館の予算や、総務関連の仕事、人事、管理系の業務を行う管理課のオフィスがあります。
バックヤードツアー参加者の皆さんを、副館長や管理課のメンバーがお出迎えしました。
管理課のオフィスからスタッフ専用の階段を通り、見慣れた場所に出て来ました。展示室へと続くエントランスホールです。
葉山館は、葉山の美観を損なわないように住民の方々との話し合いを重ね、上へ上へと伸びる建物ではなく、地下を利用して極力高さを抑えた設計の元、今から10年前に建てられました。地下と斜面を利用した内部構造は、慣れてしまうとわかりやすいのですが、美術館に慣れていない新人スタッフだと自分が何処に居るかわからなくなってしまう事もあります。参加者の皆さんは一度で美術館の構造を把握されたでしょうか??





5.散策路を通ってゴームリー彫刻へ



ゴームリーの彫刻が撤去されるまで残り約半月。担当学芸員の解説にも力が入ります。






6.講堂にて質疑応答
ゴームリー彫刻前での解説の後は、講堂に戻って質疑応答の時間です。ツアーを通じて美術館の運営に更に興味を持った方から次々に質問が寄せられ、担当学芸員がひとつひとつ丁寧にお答えいたしました。皆さんから寄せられた質問をいくつかご紹介いたしましょう。

・美術館の学芸員は公務員なのですか?
・学芸員になるには資格がいるのですか?
・海外と作品を貸し借りする際、貿易収支はどのようになっているのですか?
・作品を借りるときはお金がかかるのですか?
・毎年作品はどのくらい購入できるのですか?購入資金は税金ですか?
・作品が減ることはあるのですか??   等々・・・



質疑応答の後はアンケートにご協力きただき、「美術館バックヤードツアー」は盛況のうちに終了しました。ご参加いただいた皆様、どうもありがとうございました。
ゴームリーの「TWO TIMESーふたつの時間」はあと半月ほどで展示が終わってしまいますが、これからもお庭を散歩するようにお気軽に、神奈川県立近代美術館に遊びにいらしてください。(N.H)








2013/02/11

館長トーク「二枚の西周像、そしてふたつの時間」が行われました



ぽかぽかとした暖かい陽気に恵まれた2月10日(日)、神奈川県立近代美術館 館長 水沢勉による館長トーク「二枚の西周像、そしてふたつの時間」が行われました。
今回のプログラムは、現在葉山館で開催されている展覧会「美は甦る 検証・二枚の西周像—高橋由一から松本竣介まで」[会期〜3/24(日)]との連動企画で、水沢館長と担当研究員と対話しながら展覧会の見所を観覧した後、参加者全員で美術館の庭に移動して「TWO TIMESーふたつの時間」を鑑賞しました。

「美は甦る 検証・二枚の西周像—高橋由一から松本竣介まで」展 詳細ページ
 (神奈川県立近代美術館ウェブサイト)


 美術館エントランスホールで水沢館長による展覧会の解説と、修復の仕事、「美術品レスキュー」の活動について、当館の修復・保存を担当する研究員のお話を伺います。
本展覧会は高橋由一の作と考えられる《西周肖像画》が津和野の神社から発見された事により、すでに高橋由一作として知られている津和野町立津和野郷土館所蔵の《西周像》と比較検討するため、当館学芸スタッフが中心となって修復調査研究チームが組まれたことから生まれた企画です。同時開催として東日本大震災で被災した石巻文化センター所蔵の美術作品のうち13点の被害状況とその後の修復作業によって甦った姿を展示し発表しています。120年前に描かれた2枚の《西周肖像画》と、近年当館で修復された岸田劉生、藤田嗣治、松本竣介などの近代日本美術の作品展示を中心に、2年前に東日本大震災で被災した美術品が、修復の技術によって新たな命を吹き込まれ、甦った姿をご覧いただく展覧会として「美は甦る」とタイトルをつけたと館長。


こちらは東日本大震災で被災した作品が展示された展示室です。修復途中の作品1点があえて展示され、実際にその状態を見ながら、修復の工程や技法について担当研究員が解説します。
参加者からの質問や意見が活発に飛び交い、時間はあっという間に過ぎて行きます。



展示室で展覧会の見所を解説した後は、参加者全員で美術館散策路へ移動し、「TWO TIMESーふたつの時間」を鑑賞しました。










2012年8月に2体のゴームリーの彫刻がこの地に降りたってから約半年。あずまや前に立つ鋳鉄の彫刻も、初めの頃と比べて随分と錆の色や進み具合が変化し、まさに「葉山ナイズ」されてきました。
すっかり葉山に馴染んだゴームリーの彫刻も、この地に居られるのも3月3日(日)までとあとわずか。まだご覧になっていない方はぜひゴームリーの彫刻に会いに、既にご覧になった方も見納めに、ぜひ葉山までお越しください。展示最終日まで、充実の関連プログラムをご用意してお待ちしております。(N.H)

関連プログラムの詳細はこちらから



◆番外編

この日ご来館されたお子さんでしょうか?
あずまや前のゴームリー彫刻に、ヤツデの葉でブレスレットを作ってくださいました。
















2013/02/07

2月2日(土)パフォーマンス「動く彫刻 能―TWO TIMES of Noh」が行われました


■パフォーマンス「動く彫刻 能―TWO TIMES of Noh」

神奈川県立近代美術館 葉山の建つ土地は、かつて古墳時代や平安時代に製塩が行われていた場所でした。パフォーマンス「動く彫刻 能―TWO TIMES of Noh」は、シテ方の辰巳満次郎さんが実際に美術館の敷地を歩き、この土地ならではの演目をと、この日のパフォーマンスの為にオリジナルで考えくださったプログラムです。

演目詳細はこちらのリンクから

2011年3月11日の東北大震災で大きな痛手を受けた宮城県の塩釜の浦につながる「融」をアレンジした曲にはじまり、イギリスからやってきたゴームリーの彫刻とのコラボレーションを経て、一色の海を見下ろし平和を寿ぐ「高砂」で締めくくられるこの日のプログラムには、当日200人近い来場者の方にお越しいただきました。

このレポートでは、朝の荒天から一転、天の祝福を受けたかのように劇的な天候の回復を経て実現した、奇跡的で神々しいまでのパフォーマンスの一部を写真でご紹介して参ります。美術館の庭を一周しながら、遥かな時代を超え、場所を越えて、この場に響きあう「TWO TIMES」、「ふたつの時空」をお感じください。



1.源融をモチーフにした能の「融」をアレンジしたパフォーマンス(上演場所:美術館正門前広場)
演目詳細はこちらのリンクから











2.ゴームリーの彫刻とともに(上演場所:あずま屋付近)
演目詳細はこちらのリンクから









3.四海波静かな平和を寿ぐ「高砂」(上演場所:中庭)
演目詳細はこちらのリンクから














■最後に

「能」をテーマにしたプログラムは、ゴームリーの彫刻プロジェクトの立案段階から暖められてきた企画で、「ここ葉山の地で、能と彫刻の共演を実現させたい」という強い思いのもと、出演者の皆様をはじめ多くの関係者のご尽力により、この度実現することができました。
今一度、ご来場くださった皆様、出演者の皆様、そして開催に向けてご尽力下さった皆様方に心より御礼申し上げます。どうもありがとうございました。(N.H)

↓同日行われたワークショップのレポートはこちらから
2月2日(土)「能を体験する」ワークショップが行われました

2月2日(土)ワークショップ「能を体験しよう」が行われました

©Antony Gormley

静の中に動があり、動いていないことも一つの演技であるとする能。
本プログラムは、動く彫刻といわれる能の所作や楽器の体験をするワークショップです。
強風と横なぐりの雨が吹きつける荒天の中、このプログラムを心待ちにされていた多くの方々にお集まりいただきました。

午前中のワークショップから、劇的なまでに天気が回復した午後の能のパフォーマンスまで、2回に分けて1日の様子を振り返って参ります。

↓同日午後から行われたパフォーマンスのレポート
2月2日(土)パフォーマンス「動く彫刻 能―TWO TIMES of Noh」が行われました




■朝の美術館

強風と横なぐりの雨の中、本日のプログラムは始まりました。天気予報では午後から晴れの予報が出ていましたが、一向に回復する気配もありません。
能の面(おもて)や衣装はそれ自体が美術品であるため、1滴の雨粒ですら屋外で装束を着けて舞うことができません。天気予報と、これまで大きな屋外イベントでは天候に恵まれ続けているゴームリープロジェクトの運に賭けるように、天を仰ぐ時間が流れていきます。





■ワークショップ「能を体験しよう」
 ≫ワークショップ詳細


1.辰巳満次郎さんによる能に関するレクチャー
講師の辰巳満次郎氏

参加者全員が足袋に履き替えて準備が整うと、辰巳さんによるレクチャーからワークショップはスタートしました。
日本は古来より、左右では「左」が優先され、「左」は日、太陽、陽を表し、「右」はみぎりとも言い水や陰を表していた。平安時代の貴族の位である「左大臣」「右大臣」も左の方が地位が高い。ゆえに、能の世界では足袋や袴、足を出す順番も「左から」が行います、と辰巳さん。はじめて能に触れる方にもわかりやすい言葉でお話くださいます。




2.能の「型」を体験する
「シオル」表現を練習中の参加者
講師の方々が手本となり、基本の「カマエ」の姿勢から体験します。その後、「ハコビ」(すり足)→序破急の動き(緩急のリズム)→「カケ」(方向転換)→「クモル」(悲しい表現)→「テル」(喜び・笑いの表現)→「シオル」(泣く表現)→怒りの表現→「キル」表現(怒りの最大表現)を体験していきます。「能の感情表現は、他の舞台芸術に比べて本当に動きが少ない。わずかな顔の角度で喜怒哀楽を表現する。足し算のオーバーアクションではなく、引き算のアクションとも言える。しかし、演者の魂の中はもの凄く(壮絶な程に)その感情を秘めている」と辰巳さん。





3.能面の解説と能面をつけた動きの体験
 能において命より大切なものと言われる能面(又は「おもて」)を今回のワークショップの為に4つお持ちくださいました。4つの能面はそれぞれ、
・小面(こおもて)[昭和作、約70年前]
・増(ぞう)[昭和作、約50年前]
・中将(ちゅうじょう)[江戸中期作]
・邯鄲男(かんたんおとこ)[江戸初期作]

拝見するだけかと思いきや、貴重な能面を参加者の方にも実際につけさせて下さいました。つける前には、床に置いた能面に向かって必ず一礼するのが作法。 わずかな顔の角度で感情表現する能は、おもてをつける角度も非常に重要になるため、講師の方々が入念に位置を調整します。

有志4人の参加者が、実際に能面をつけて習ったばかりの能の型を実際に演じていきます。
こちらに背を向けて座っていらっしゃるのが辰巳さん。かけ声で4人の動きをリードされていきます。

能面をつけた参加者が並ぶと、先ほどのわきあいあいとした雰囲気から一転、会場に緊張感が生まれるのが不思議です。皆さん初めてとは思えないくらいに素晴らしい動きをされていました。







4. 能笛と小鼓の体験

能面の解説の後は、囃子方の重要な核となる能笛と小鼓を体験します。参加者は4人づつ2組にわかれて自分の番を待ちます。
今回教えて下さるのは、能笛の小野寺竜一さんと小鼓の清水晧祐さん。小鼓の清水さんは、早くより能の普及に努め、能楽囃子ワークショップの先駆者でもいらっしゃいます。

能の舞台での笛の役割は、シテ方の心理や、風などの自然現象を象徴するように高音低音を駆使し演目を装飾します。メロディではなくリズムを重視し、場の雰囲気づくりに努めます。小鼓もそうですが、簡単に鳴りそうで鳴らないのが能の楽器の奥深さです。思い切り息を吹き込まなければ笛はびくともしません。講師の方々の丁寧な教えに応えようと試みるものの、これがなかなかに難しい・・・もどかしい思いばかりが先にたちます。


能の囃子方で最も有名なのが小鼓ではないでしょうか?一度は「ポンっ」と心地良い音で鳴らしてみたいと、多くの方が思われたに違いありません。ですが、あの音を出すのに、人によっては10年かかるとも言われているそうで、実際に試してみると...「ペシッ」という音しか鳴ってはくれません。
小鼓の叩き方と同時に、清水さんからかけ声のかけ方も教わります。「ィヨ—」「ホッ」「ホッ」というかけ声とともに小鼓を叩くのですが、清水さん、辰巳さん、地謡の方々も直々に参加者の小鼓の調べにかけ声を乗せて下さいます。その音色の美しさと大迫力の声量に圧倒されながら、とても贅沢な時間を過ごしました。



5. 能の映像鑑賞と質疑応答

能の体験と、辰巳さんが編集された映像鑑賞を通じて能に関する理解を深めた後に、ワークショップの締めくくりに、午後からのパフォーマンスの解説も交えつつ、辰巳さんと参加者の方との対話の時間が持たれました。

■参加者:
「辰巳さんが能をされている時、舞っているという感覚か、演じているという感覚か、どういう気持ちでされているのですか?」

■辰巳さん:
「両方と言えます。もう一人の自分を使って客観的に演じている自分を見つめている部分もあります。丁度いいのが能面です。能面の外と内、その間に空間が生まれます。そこが自分にとって客観的な視座を持てるチェック機能のような役割を果たすのです」

■参加者:
「能舞台を出て演じられたり新作を演じられたりすることもあると思いますが、古典的な型と新しさについて、どのように捉えていらっしゃいますか?」

■辰巳さん:
「私はどこで演じようが全て『能』だと思っています。今のように能舞台で能が演じられるようになったのは江戸時代以降の話で、それ以前はどこでも能を演じていました。『芝能』というのがあるように、昔は芝生の上で能を演じる事もありました。自分としては型を破っているという感覚はありません。演じる場所が異なるだけです。」


「能舞台の背景に描かれる松は神が降りてくる所を意味し、橋がかりという能舞台を正面から見て左側に位置する通路は、時空をつなぐ場所でもある。能は、深い精神性と宇宙的な広がりを持っている」と力強く語る、辰巳さんの言葉が非常に印象的でした。


能の「型」の体験からはじまり、楽器まで体験することができた充実のワークショップはこれにて終了です。午後からは、いよいよ今回講師としてご参加下さった方々が演じる能のパフォーマンス「動く彫刻 能―TWO TIMES of Noh」が上演されます。

美術館の野外を舞台に、どんなパフォーマンスが繰り広げられたのでしょうか?
詳細はこちらのリンクからご覧ください。(N.H)

2月2日(土)パフォーマンス「動く彫刻 能―TWO TIMES of Noh」が行われました